しのべ動物病院(大阪府)篠部先生

RayenceのDRを知ったきっかけについて教えてください。
使用していたCRでは読影に耐え得る画像が得られず困っており、定期的に聴講させていただいているセミナーの講師の先生に相談したところ、「良い製品があるよ」と教えてもらった事がきっかけでした。先だってRayenceの口腔内センサーは導入しており、その使用感に良い印象を持っていたので、同じメーカーのDRを導入することに抵抗は全くありませんでした。

口腔内センサーを導入する前は歯科のレントゲンはどのように撮影していましたか?
口外法はCRで、口内法はアナログフィルムで撮影していました。
アナログフィルムでは現像液の使用期限があり、現像までの時間が長くかかり、手間も多く、作業者によっては現像のムラが出て再現性が低かったり…と不満点を多く抱えてました。また、口内法に関しては撮影法に「慣れ」が必要で、自分が撮影したい画像が一度の撮影で得られるまでに練習が必須となります。
CRを用いた口外法ではアナログフィルムにあったような不満点も少なく、撮影方法も簡便ですが、読影に耐え得るような鮮鋭度の高い画像を撮影することはできませんでした。
獣医師が歯科処置を実施するにあたって口腔レントゲン撮影を躊躇してしまう理由が上記の点にあるかと自分は考えています。
ただ口内法に関しては、Rayenceの口腔内センサーのようにデジタル化されてくると、撮影方法さえ習得してしまえば、今の状況は変わるのではないかと思います。
DRを導入してから歯科のレントゲン撮影で変わったことはありますか?
DRを導入してからは、歯科処置が必要な全症例にRayenceのフラットパネルを用いて口外法による撮影を実施しています。
CRを利用していた頃は口外法で撮影を実施しても、重度の歯周病から顎骨が融解しているか否かくらいまでしか判別できませんでしたので、口腔内センサーを用いた口内法による撮影も平行して実施していました。
フラットパネルを利用した口外法では鮮鋭度の高い画像が簡便に得られるようになったため、口腔内センサーを利用することがほとんどなくなりました。
根幹長測定が必須である歯内療法を実施する時は口内法による撮影が必須ですので、その際には口腔内センサーを利用して撮影をしています。
DRを導入するにあたり、他社と比較しましたか?
比較は全くしませんでした。
DRは導入コストが高いと聞いていたのですが、RayenceのDRはこちらが考えているよりもコストが低いものでした。
また、米国で活動されている整形外科専門医の先生からも「国内の某メーカーと比較しても遜色ない」と聞いていたので他社と比較することなく安心して導入しました。
導入の決め手になったポイントは?
一番大きかったのは、もともとRayenceの口腔内センサーを導入しており使用感に安定感があったことです。あと、CRで撮影した画像を「心の目で読影する」ことに限界がきていました。「(画像には出てないけど)多分、ここがこうなっているのだろうな…」という診断をせざるを得なかったため、読影に耐え得る画質が良いレントゲンが欲しかったのもありました。
使用されてみての感想について教えてください。
やはり撮影した画像が表示されるまでの時間が短いことが助かります。
当院では歯科処置の際に口外法で6方向の撮影を実施するのですが(右側上顎、右側下顎、左側上顎、左側下顎、上顎切歯、下顎切歯)、CRを利用していた時は撮影して画像が表示されるまでに時間がかかることが悩みでした。
撮影中の動物は鎮静剤を投与していますが気管挿管をしていませんので、撮影中に呼吸抑制が出ないように維持することに苦慮していましたし、時間がかかって表示された画像がこちらの期待するものでなかった際には再撮影を強いることになり、さらに時間がかかる…というストレスがありました。
DRを導入してからは6方向の撮影であっても2分もかかりませんし、再撮影も気軽にできるため、上記のストレスからは解放されました。
当然ですが、歯科以外で得られるメリットも多く、今までCRでは検出できていなかった尿管結石などが検出できるようになりましたし、胆石はもちろん肝内胆石の所在なども検出できるようになりました。以前は尿管結石の所在を明確にするために造影検査を実施することもありましたが、今は全く実施しなくなりました。
総合的に単純レントゲン検査でピックアップできる疾患が増え、飼い主に提案できる治療のオプションが増えました。
ただDRは「よく見える=見えすぎる」ため、今まで経験として蓄積された診断法では対応できない偶発的画像所見(※)を検出することが多くなったように感じます。特に肺野の所見で、何かしらの疾患の影響なのか老齢性の変化なのかを判断するのに苦慮することがあります。
画像診断の書籍も今はフィルムやCRの画像のものが多いので、DRで撮影した画像診断の書籍も多く世に出てくると非常に助かります。特に正常な動物をDRで撮影した書籍が出て欲しいと思います。これからの時代にCRやアナログフィルムがさらに浸透していくことはないと自分は考えていますので、これから画像診断に携わる方々には特に必要になるのではないかと思います。

※偶発的画像所見:健常者、無症状の患者における画像上の異常、および有症状患者における症状とは明確な関連がない画像上の異常所見

これからレントゲンの購入や買い替えをご検討されている病院様に何かアドバイスがあればお願いします。
「今からCRを導入するか」と尋ねられたら、まずそれはないと思います。
現実的な話ですが、Rayenceのフラットパネルを導入して1年くらいになりますが、すでに投資回収はできています。
その理由としては、レントゲン撮影をする機会が格段に増え、それにより検出できる疾患も増え、レントゲンで判別つかない部分は他の検査(超音波検査、CT検査など)を提案できるようになりました。さらに特定できる疾患が増加するようになってから、実施可能な手術の件数が増えました。
今までは「(CRで)レントゲン撮っても何も検出できないだろうな…」と考えてしまうことがあり、「飼い主に無駄に費用をかけさせないため」と理由をつけてそのまま経過観察していた症例が多かったのですが、DRで撮影した画像は飼い主にも説明しやすく、異常所見に対しての理解も得られやすいため、今では積極的にレントゲン検査を提案することが多くなりました。やはり画像が鮮明なので、大きな画面で説明するとインパクトがありますね。
超音波検査も並行して実施することが多いのですが、こちらはレントゲン検査と比較して飼い主への説明がやや難しく、イメージを共有しにくいため理解も得られにくいのかなと感じています。
ただ、これだけ有用なツールであるDRを利用したとしても、レントゲン検査だけで疾患の特定はできないことがほとんどなので、今まで通り超音波検査や血液検査などの一次診療で実施できる検査をフル活用して疾患の鑑別診断を実施していくことに変わりはありません。